ハードルの高い練習場所

Sport Athletics

室内楽だとかオケをやっていると、
音楽ホールや公共施設の練習場を借りることがあります。

公共施設の予約はまだまだネットはおろか、電話だけでは済まされず、
窓口で申請書を出さなければならないところが多くあります。
そして、その窓口営業時間が平日9時~17時のところもあります。
土曜日も開けていればいいほうではありますが、
平日昼間に誰が申し込めるというのですか。

なんとかしたいものです。議員にでもなりましょうかね。

仕事の昼休みに練習する場所

演奏会など本番が近い日の昼休み、
カラオケボックスで練習することがあります。
いいやり方を見つけた!と喜んでいたのですが、
最近、楽器を演奏する者にとって、意外にポピュラーな方法になりつつあるようです。

防音の練習室なんて借りるより、よっぽど安上がりです。
ピアノがいらない場合は、カラオケボックスで十分です。
もちろん、練習に飽きたら、歌えるのです。

勤務先から近い、お気に入りのお店は、
昼間はドリンクバーが無料ということもあり、焼きそばを頼んで1時間800円。
普通のランチより安かったりします。

すべては「鳴っている状態」をつくってから

高校生などの初心者の演奏を聴くと、
楽器が「鳴っていない」ことに気づきます。
これは、楽器が音を発していないということではなく、
楽器本来の音色が十分に発揮されていないということです。

大きな音が「大きな音」として役に立つためには、
それに対比する小さな音が必要です。
楽器が「鳴っていない」状態で単に音を小さくしようとすると、響きのない、
音が小さいだけの、演奏効果としての「小さな音」が出せない状態になります。
もちろん、楽器が鳴っていない状態では音を大きくすることもできません。
つまり、最初に学ぶべきことは、楽器を「鳴っている」状態にすること、
楽器本来の音色を十分に引き出し、響かせてやることです。

初心者が自分のボーイングやフレージングを考えるとき、
楽器が十分に響いている状態を最初に作ってから、
それをもとにさまざまな判断を加えていくことが大切です。

自分を知って「正しいこと」を導くしかない

大人になってから楽器を始める初心者自身にとっては、
指導書に書かれていることが
必ずしも自分にとって「正しいこと」とは限らないということを以前言及しました。

では、どのようにして「正しいこと」を知るか、というのが問題になります。
どのようにして「正しいこと」に近づけるのか、という方法も考えなければなりません。

もちろん、レッスンについていて指導を受けていれば、
受講者に合わせた指摘を受けることができる可能性が高いのですが、
部活動やサークル活動などで、体系的な指導を受けられない場合、
例えば、2 人組で対面で練習を行う、鏡を使う、
何らかの自己を検証する方法を見つけることが、
自分に合ったボーイングを身に付けるためにも必要なことと考えています。

最近で言えば、おすすめは
スマホでの動画撮影(練習状況の“自撮り”)です。
何でも便利なものがあるこの時代、上達のためには使わない手はありません。

他人のボーイングは自分にとって正解ではない?

ボーイングには、指導書や理論書の数だけ見解があります。
つまり、念頭に置いておくべきは、ボーイングは人それぞれであるということと、
プロの演奏家のボーイングをそのまま真似しようと思ってはいけないということです。

プロのオーケストラをみると、
奏者一人一人のボーイングが非常に違っていることに気がつきます。
小さい頃からヴァイオリンの練習を積んできた人は、
長い間に体の使い方を覚えていて、
経験者は知らず知らずのうちに各々に合ったボーイングを可能にしています。
アマチュア、特に身体的成長を終えてからヴァイオリンを始めた人が、
特定の奏者のボーイングを自分の身体へのフィット感を気にすることなく、
機械的に真似することは危険です。

指導者の立場からすれば、
指導者である自分のボーイングだけを「正解」として
身体的成長が終わった生徒に強制してはならないということです。
体つきや運動の仕方が異なる人、
これまで自分と全く異なる筋肉のつき方/衰え方をしてきた人に
自分の体の動きを真似して覚えさせようとする教え方は、
幼児に教える場合などと違って、多くの場合不適切であると考えられます。

平均した音を出すには
弓の根元では人差指をゆるめにして中指でしっかり持ち、小指は丸く

篠崎弘嗣『篠崎バイオリン教本1』全音楽譜出版社 より

というような、市販の教則本によく見られる記述でも、
この考え方が当てはまるボーイングスタイルをしている経験者は確かに多いのですが、
当然、当てはまらない人もいます。
ボーイングに関しても、初心者は、
さまざまな指導・忠言が、必ず自分にも当てはまると思いこんでしまわないことが大切です。

初心者でもいきなりヴィブラートをやる

左手は丸みを保ち、力を入れてしまわないように生卵を持つ感覚で、と言われます。

そもそも左手に力を入れてはいけない理由は何でしょうか。

それは、普通に指を動かすことはもちろん、
ポジション移動や、ヴィブラートなど、さまざまな指の運用の妨げになるからです。
これは、逆に言えば、
ヴィブラートをしつつポジション移動できれば、左手に無駄な力が加わっていない
理想の状態だということが言えます。

なので、ある程度、左手の形がマスターでき、指を押さえる角度が理想的であれば、
音階がままならない段階でも、
いきなり、ヴィブラートを練習することをお勧めします。

ヴィブラートをやることで、左手の無駄な力が制限され、
結果として運指もポジション移動もスムーズになるはずです。
指を押さえた次の瞬間には力が抜けて、次の音への準備を始める、という流れの実現にも
役立つ考え方です。

初心者は、大人であっても、音程が安定するまでヴィブラートを禁止しないと、
変な癖がついてしまうという考え方が大勢を占めるようですが、
それはヴィブラートに起因することではなく、
指の押さえ方・弦への触れ方の問題、または、音程感覚の問題であって、
ヴィブラートをやってはいけないことの理由にはなりません
理想・目的に適していれば、練習項目にわざわざ垣根を作る必要はないのです。
そして、初心者にとって、到達目標地点があらかじめ見えるほうが、教え方として親切です。

あまりにもヴィブラートを温存しすぎることで、
左手が揺らがない形に慣れてしまい、
ヴィブラートの習得のハードルが無駄に上がりすぎることや、
ヴィブラートを含まない音程感覚が浸みつきすぎて、
ヴィブラートをやったときの違和感が起こること、逆に、
音程の中心を捉えたヴィブラートの習得に、また別にコツを見出す必要があることなど、
ヴィブラート込みで練習しないことによる弊害が大きいように思います。

楽器練習のPDCA

ビジネス活動の品質管理や生産の効率化の手法として、
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)という、
PDCA」はよく言われることです。

楽器練習、あるいは楽器指導においても、このPDCAを考えることができます。

Plan(奏法の計画)→ Do(奏法の実践)→ Check(演奏効果の確認)→ Action(奏法の修正)
の PDCAサイクルを回し、細かい課題について試行・確認を繰り返すことで、
全体のブラッシュアップを目指すというのが、楽器練習のPDCAです。

楽器練習では、たとえば、日課となるような開放弦のボーイング練習などでは、
無自覚に繰り返して、ウォーミングアップできたという自己満足に陥りがちです。
こういうときに奏法のPlan、それに対するCheckが無いのは
せっかく日課でやっているのにも関わらず、非常にもったいないと思います。

無自覚な練習への反省として、このPDCAはとても有効です。

一方、この練習方法では、
PDCAの回転数が適切な場合にようやく理想の状態に到達できるのであって、
練習時間が十分でない場合は、
PDCAの回転不足により、単純に理想状態まで到達できないこと、または、
PDCAの回転数は多いものの、
課題に対する小練習や新しい課題設定(=PlanとDo)が実情に比してハードルが高すぎるため、
確認の試奏(=Check)後にもう一度同じ課題に取り組むなどの「後退」が起こること、
この2パターンのリスクが考えられます。

したがって、この楽器練習・指導のPDCAは、
物理的な練習時間が確保でき、かつ、 理想に対する改善策がある程度形式的な場合にのみ、
有効な考え方と言えます。

左手の練習は小指から始める

左手の指の訓練について、ふつうは、人差し指から、押える位置を確認していくと思いますが
4の指(小指)から、3の指(薬指)、2の指(中指)、1の指(人差し指)の順に
押さえる位置を確認してみることをお勧めします。

実際の演奏場面では、
基本的には親指-人差し指が基準になって、ポジションを移動していきます。
なので、人差し指の位置をしっかりと定める必要があるのは言うまでもありません。
しかしながら慣れないうちは、
1から2、3、4に向かう途中で、どうしても1の指がずり上がって、
4、3、2、1と戻ってきたときに、1の指の位置はずれて、
音程(A線のいわゆる「シ」)がひどい状態になります。
そして、練習と思い込んでこれを慣れるまで繰り返すのは
1の指がずり上がる練習になってしまうリスクがあります。

4の指からの押さえ位置の確認をお勧めするのは
・1、2、3の指のずり上がりを防ぐ
・4の指(小指)が届きづらい
・左手の形がすぐに崩れる、安定しない
これらを一気に解消できると考えるからです。

ただし、形が正しくなければいけません。

基本的な姿勢として、小指から“誘惑する”ことをまずやってみます。
「カモーン」と言いながら、
下の図のように、4(小指)から順番に3、2、1と、1本ずつ指を倒していきます。
これが、楽器を構えたときに自ずときれいな左手の形にするための、体操です。

ポイントは、小指の指先を限りなく手首の真ん中に近づけるイメージです。

このとき、自分から見て、
4から1までの指先が縦一直線に並ぶような状態が理想です。

縦一直線に並ぶ状態にできれば、
左手の掌に自然なひねりを生み、小指のストレッチできていることになるので、
小指が届かないという悩みを解消
できます。

これはダメな例です。

こんな誘い方では、誰も落とせません。
楽器を構えていないので、この失敗例は極端ではありますが、
小指が届かない場合や、1の指がずり上がる場合には、
このように、左手(掌)の自然なひねりが生み出されておらず、
ひらいてしまっていることが原因です。

こうして、4の指から押える繰り返しにより、理想の左手の形を習得できるので、
1、2、3の指のずり上がらず、
結果として、1の指の位置が定まりやすいと考えています。
さらに、4の指の練習を後回しにすることによって起こる、
小指が届かないから嫌い、小指が届いても押えが弱くて音が細る、などの、
4の指アレルギーを未然に防ぐことにもなります。

音が汚いとき、ちゃんと音が鳴らないとき

きれいな音が出ないとき、
つまり、弦を鳴らすことができていないときの原因は、つぎの2つに大別されます。

音がゴリゴリしている場合には右手・右腕に力が入りすぎていて、
音がヒュルヒュルしている場合には弓がスリップしているということです。

■ゴリゴリの解消法

力が入りすぎているので、
無理にでももっと長く弓(全弓)を使うようにします。
そうすることで、弓と弦との接点のある一点あたりにかかる力を
相対的に減らすことができます。
そして、速く弓を動かします。
力を入れて速く動かすのは難しいので、力が抜けてきます。
というか、力を抜かざるを得ない状況をつくります。
この状況に慣れることによって、ゴリゴリを解消できるはずです。

■ヒュルヒュルの解消法

弓のスリップを解消しなければなりません。
弓と弦との交点での交わる角度が垂直でない場合に、
スリップが起こりやすくなります。
このとき、ダウンボウでもアップボウでも、
左手人差し指にもう少し体重を乗せる必要があります。
ダウンボウのときに特に、小指に体重を載せて…という教えがありますが、
人差し指の体重をゼロにして良いわけではありません。
せいぜい、ダウンボウでも人差し指:小指=50:50くらいだと考えています。

フォルテとピアノの差が出ないとき

ヴァイオリンの音量の差は、
単純に弓に体重がかかっているかどうか、ということで表現することもありますが、
弓の毛の量に比例するということを
体に意識付けさせるのがよいと思います。

フォルテでは、弦に触れる弓の毛の量を増やし、
ピアノでは、弦に触れる弓の毛の量を減らします。

さて、弓の毛の量の増やし方は、というと、
 ●弓の長さを増やす
 ●弓の毛が弦に触れる面を増やす
この二つの方法が考えられます。

≪弓の長さを増やす方法≫
単位時間当たりの弓の長さを増やすわけなので、
自ずと速く弓を動かす必要があります。
なので、比較的はっきりしたパッセージや、
勢いが必要なところで乾いた明るいフォルテに適しています。

≪弓の毛が弦に触れる面を増やす方法≫
弓は通常、木の部分を少し向こう側に倒して、
毛が少し見える状態で弾きますが、
それを、ほとんど全ての毛が弦に吸い付いているように弾きます。
これをベタ弓と言います。
この場合は比較的ゆっくりな幅広いフォルテや、
だんだんクレッシェンドして向かう場合のフォルテにおすすめです。