あるチェロ奏者の方と意見交換する機会がありました。そこで激しく共感しあっていたのが、
弓の「初速度」についてでした。
常々、大切にしなければならないのは、音の速さだと考えています。
ある意味では瞬間的な音の圧とも言えるとは思いますが、弓の圧力とは全く異なります。
あくまでも音そのものが持つ圧力で、
その調整のためには、速さの加減が必要だと思っています。
「速さの加減」と書きましたが、
ヴァイオリンを演奏する場合、すなわち弓の速さの加減です。
ただ、多くの場合、あまり「加」や「減」が問題なのではなく、
音の鳴り始めで、単純にスピードが足りない場合が多いようです。
これまで指導した感覚的には、
弓を進め始めてしばらくしてからの速度は出しやすいのですが、
瞬間的な初速度を苦手にしている、
というか、
初速度が無くてもそこが課題だと感じていない人が多いようです。
はっきりとした音にしたい場合、弓に圧力を加えがちですが、
弓を抑え込むと、単純に音が汚くなってしまうということもありますし、
弓と弦の弾力が強くなるので、音は大きくなる一方で意外とソフトな音になってしまいます。
演奏者がウンッと気合いを入れて圧力を加えているのとは裏腹に、
実はソフトに聴こえてしまっています。
これは、一つの素人臭さだと思います。
いつか書いたことがありますが、単位時間当たりの弓の毛の接地量を増加させると、
音の圧力につながります。
弓に圧力を加えるだけでは、弓の毛がベチャっとなって、接地量が少し増えるだけなので、
ここに、瞬間的な初速度を加えて初めて、音がはっきりするのです。
音をはっきりさせたいけどp(ピアノ)って、どういうこと??
と戸惑う場合がありますが、まさにこういう場合に、
弓の持ち方、弦への接し方はpの形で、瞬間的な初速度を与えてやればよいのです。
そうすれば、細かい音、弱い音だって、ハキハキ、生き生きした音になります。
ヴィヴァルディなどの音をパタパタと明瞭に変えていかなければいけないような
バロックを演奏する場合、とってもとっても重要な要素ですね。