右手・弓の大切さ

ヴァイオリン界の大教育者、レオポルト・アウアーは、

若い生徒は速いテンポでパッセージを演奏したい衝動に駆られ、ただ指の速い動きを楽しむことだけに酔いしれて、有頂天になりがちである。

と著書で述べています。
これは、初心者への指導で観察できる傾向と同じです。
自分の過去の反省を含め、ですが。

また、8巻組である彼の教則本のうち、第1巻では、
左手の操作を一切使うことなく、右手だけで、
つまりボーイングだけを徹底的に練習させているほど、
右手のトレーニングを重要視しています。
その弟子であったギブンもまた、

困難なことは、長い弓の操作において完全なる釣合と平衡を得ることです。毎日私は常に半時間は長い弓について練習し、演奏会を開く前の1カ月間は、必ず毎日1時間は長い弓に時間をかけます。

…と述べています。

このように、大ヴァイオリニストたちはボーイング、
つまり右手、弓の扱いについて、非常に注意深く練習しているのです。
確かに、初心者にとって、私にとっても、
左手で音程の変化をつけず、右手で弓を滑らしているというのはつまらないことです。
しかしながら、 サルヴァトーレ・アッカルド

右手には『声』がある。あらゆる音色、クレッシェンド、ディミヌエンド、厚い音、軽い音は弓から生まれる。

…と述べたように、
真に表情豊かな音楽をつくるためには、右手の自在な動きが必要なのです。

言うまでもなく、そのボーイング練習が、
実のある正しいものである必要がありますが、
忙しい大人にとっては、
少なくとも毎日ストレッチ(仮想でボーイングをしてみる)をするだけでも
プラスになることでしょう。

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