左手は丸みを保ち、力を入れてしまわないように生卵を持つ感覚で、と言われます。
そもそも左手に力を入れてはいけない理由は何でしょうか。
それは、普通に指を動かすことはもちろん、
ポジション移動や、ヴィブラートなど、さまざまな指の運用の妨げになるからです。
これは、逆に言えば、
ヴィブラートをしつつポジション移動できれば、左手に無駄な力が加わっていない、
理想の状態だということが言えます。
なので、ある程度、左手の形がマスターでき、指を押さえる角度が理想的であれば、
音階がままならない段階でも、
いきなり、ヴィブラートを練習することをお勧めします。
ヴィブラートをやることで、左手の無駄な力が制限され、
結果として運指もポジション移動もスムーズになるはずです。
指を押さえた次の瞬間には力が抜けて、次の音への準備を始める、という流れの実現にも
役立つ考え方です。
初心者は、大人であっても、音程が安定するまでヴィブラートを禁止しないと、
変な癖がついてしまうという考え方が大勢を占めるようですが、
それはヴィブラートに起因することではなく、
指の押さえ方・弦への触れ方の問題、または、音程感覚の問題であって、
ヴィブラートをやってはいけないことの理由にはなりません。
理想・目的に適していれば、練習項目にわざわざ垣根を作る必要はないのです。
そして、初心者にとって、到達目標地点があらかじめ見えるほうが、教え方として親切です。
あまりにもヴィブラートを温存しすぎることで、
左手が揺らがない形に慣れてしまい、
ヴィブラートの習得のハードルが無駄に上がりすぎることや、
ヴィブラートを含まない音程感覚が浸みつきすぎて、
ヴィブラートをやったときの違和感が起こること、逆に、
音程の中心を捉えたヴィブラートの習得に、また別にコツを見出す必要があることなど、
ヴィブラート込みで練習しないことによる弊害が大きいように思います。