他人のボーイングは自分にとって正解ではない?

ボーイングには、指導書や理論書の数だけ見解があります。
つまり、念頭に置いておくべきは、ボーイングは人それぞれであるということと、
プロの演奏家のボーイングをそのまま真似しようと思ってはいけないということです。

プロのオーケストラをみると、
奏者一人一人のボーイングが非常に違っていることに気がつきます。
小さい頃からヴァイオリンの練習を積んできた人は、
長い間に体の使い方を覚えていて、
経験者は知らず知らずのうちに各々に合ったボーイングを可能にしています。
アマチュア、特に身体的成長を終えてからヴァイオリンを始めた人が、
特定の奏者のボーイングを自分の身体へのフィット感を気にすることなく、
機械的に真似することは危険です。

指導者の立場からすれば、
指導者である自分のボーイングだけを「正解」として
身体的成長が終わった生徒に強制してはならないということです。
体つきや運動の仕方が異なる人、
これまで自分と全く異なる筋肉のつき方/衰え方をしてきた人に
自分の体の動きを真似して覚えさせようとする教え方は、
幼児に教える場合などと違って、多くの場合不適切であると考えられます。

平均した音を出すには
弓の根元では人差指をゆるめにして中指でしっかり持ち、小指は丸く

篠崎弘嗣『篠崎バイオリン教本1』全音楽譜出版社 より

というような、市販の教則本によく見られる記述でも、
この考え方が当てはまるボーイングスタイルをしている経験者は確かに多いのですが、
当然、当てはまらない人もいます。
ボーイングに関しても、初心者は、
さまざまな指導・忠言が、必ず自分にも当てはまると思いこんでしまわないことが大切です。

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